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必要としてくれるお客様のために一歩ずつ その中でも家族との時間をしっかりと

獨協人登場2022.10.10
必要としてくれるお客様のために一歩ずつ その中でも家族との時間をしっかりと

必要としてくれるお客様のために一歩ずつその中でも家族との時間をしっかりと

接客・販売員講師
(株式会社Clienteling Advisory代表取締役)
土井 美和さん
(2001年英語学科卒)

「ルイ・ヴィトン」で19年間、販売員として活躍した土井美和さん。入社11年目の2012年には顧客数で全国1位となり、19年には数少ない「トップパフォーマー」に任命された。顧客保有数全国1位になり、多くのお客様から愛されてきた経験から、お客様に長きに渡ってリピートしていただける人を増やしていきたいという思いから、2020年2月末、ルイ・ヴィトンジャパン退社。2020年3月独立。現在は、ルイ・ヴィトンでの経験を独自のメソッドに落とし込み「永久リピート顧客の作り方」を伝授している。順調だった販売員キャリアから独立にいたった経緯と、大学時代の思い出を中心に伺った。

退職のきっかけは子どもとの時間

 「温かい夕飯を一緒に囲みたい」「おかえりと言いたい」 子どもの受験がきっかけでしたが、母親として苦悩がありました。「ルイ・ヴィトン」で順調に販売員としてキャリアを積んできた一方で、母親として子どもたちに割ける時間がどうしても限られてしまう。土日祝日はお客様の来店数も多く、基本は仕事。家族の時間を持つことがなかなか難しい日々でした。ふと、今まで必死で駆け抜けてきた販売員人生を振り返ったときに、「これからも同じような働き方ができるのか」今がピークだと感じているときだからこそ、ここからまだ20年あるから新しい何かを始められるかも、とモチベーションが生まれました。中学生と高校生の子どもたちがその翌年ダブル受験を迎えるにあたり、そばにいて一緒に受験勉強を戦いたいなという母としての気持ちも強くなり、そういったタイミングが合成したことで退職を決意し独立にいたりました。

自分の接客が強みになるのか?

 退職は決めましたが、その後のことは決めていませんでした。独立を具体的に考え始めたのはルイ・ヴィトンで8年間に渡って私宛にご来店くださっていったお客様のコミュニティに入ったのがきっかけでした。その方は、オンラインマーケッターで、オンライン配信でコンテンツを提供するコミュニティを運営されている方でした。ご自身の生徒さんとご来店されることもあり、生徒さんが皆ご活躍されていてなおかつ楽しそうだったのが入会のきっかけでもありました。そのコミュニティで、公休日や帰宅後に独立後のコンセプトメーキングを行いました。当初は「母でもキラキラ、キャリアもキラキラ」とよくあるキラキラ主婦系を考えましたが、「誰もそんな発信お金払ってくれないよ」とバッサリ。「土井さんの強みは顧客のために接客できることだよ、むしろそこが一番の強みじゃないの?」とズバッとアドバイスをいただきました。納得する一方で、「私の接客スキルなんかが本当にコンテンツにできるのかな?」と、今まで感覚的に行ってきたので、戸惑いがあったのも事実です。幸いまだその時は販売員でもあったので、店長に独立後のベースとなる自分のトレーニングを社内で行いたいと相談。快く承諾いただき、30名ほどにトレーニングを行うことができました。トレーニング後のアンケートをとり、「もっとここが詳しく知りたい」「ここは聞けてよかった」という良い点、改善点を知ることができ、この社内でのトレーニングが現在の仕事へと繋がっています。




転機は3・11

 2011年3月11日。東日本大震災で、2週間営業がストップしました。入社してから今まで、日々多くのお客様がご来店くださり、言い方は悪いですが当たり前のように物が売れていたんです。しかし、この2週間ストップしたことで、初めてことまでのことは当たり前ではなかったのだと気づくことができました。営業再開後、以前よりも目の前のお客様とのコミュニケーションをより大切にするようになりました。「あの日は無事帰宅はできましたか」、「ご自宅に被害はありませんでしたか」というように、この大変な状況の中、今日ルイ・ヴィトンにご来店されるお客様とどのようなコミュニケーションを取るべきなのか? を考えて接客するようになりました。お客様とよリ深い対話をする中で、お一人お一人違うストーリーがあることに気づきました。そのような顧客視点での接客を積み重ねたことで結果として、2012年の顧客保有数NO.1へと繋がることになります。
※顧客保有数:販売員の指名で来店・再度の購入があったお客様のこと。

野球サークル、オーストラリア留学が思い出

 大学時代の思い出は、野球サークル(ルースターズ)です。獨協埼玉高校の時の同級生や先輩が多く所属していたのものあり、最初からとても楽しく参加することができました。今でもサークル仲間とはつながっていて、この間もBBQをやりました。夫も同じサークルでした。週2回活動、合宿もいい思い出です。サークル仲間と食べる学食もよく覚えていて、旧学食から新しい学食に変わる時期でした。新旧学食2つ経験できたのもいい思い出です。
 ゼミはE・カーニー先生のゼミに所属していました。ウーロンゴン大学(オーストラリア)に1か月留学していました。短期留学だったからこそ、その後の英語力を落としたくないと思い、銀座のレストランで海外の方相手にコミュニケーションを取ることで、英語力を維持していきました。このお客様とのコミュニケーションはその後のルイ・ヴィトンでの接客にも活かされました。ゼミの1つ上の先輩と仲良くなり、ハロウィンの時期にニューヨークに1週間ほど旅行にいきました。ゼミでの出会いもよい思い出です。
「独立してよかったね」と言われるように
 まず第一に接客という仕事の価値を向上させたいと思っています。ECでなんでも便利に購入できる時代だからこそ、リアルに出会える「人」の価値を感じてもらえる人を増やしたいなと余計に思うんです。私は幼少期から自分に自信がありませんでした。そういう気持ちを持ったまま販売員になり、商品が売れる喜びではなくて「あなたに出会えたから」、「あなたに会えて楽しかったから」と言ってもらえることで、自分の存在価値を感じることができる仕事に出会えたと思っています。
 仕事でも、プライベートでも以前よりも自信を持てるようになれたのは、私が仕事との出会いから感じられたことなので、そのような方が増えたら嬉しいと思っています。
 今後の展開ですが、会社を大きくするというよりかは、必要としてくれているお客様のために一歩ずつ頑張っていきたいと思っています。その中で家族との時間をしっかり持ちたいという想いがあります。子どもたちが大人になっていく今思うことは、この先何年一緒にいれるかわからないということです。だからこそ仕事と家族のバランスをうまく考えていきたいです。独立後はみんなで夕食を囲めること、今までは「おかえり」を言われる側でしたが子どもにおかえりと言え、帰宅後の表情がわかるのも嬉しいです。浮かない顔なら学校で何かあったのかとわかり声をかけることができる。正直子どもたちもルイ・ヴィトンを辞めることには驚いていたようです。ルイ・ヴィトンがどのような企業で私がどの立場にいたかも理解できる年齢です。誇りに思っていてくれた分、もったいないという感覚があったのかもしれません。独立してより楽しんでいる姿、子ども達からも「独立してよかったね」と言われるようにがんばっていきたいです。

(取材:佐藤祐一/写真・ 動画:高木大介)


学生時代の土井さん(右から3番目)

【著書の紹介】
『元ルイ・ヴィトン顧客保有数No.1
トップ販売員の接客術』
「二八の法則」なんて無視していい。「何かお探しですか?」を使わないファーストアプローチ。あなただから提案できる「三種の神器」を選ぶetc.一度の出会いが“永久リピート”に変わる!確実に売上を伸ばす、これからの販売ノウハウを初公開
大和出版 1,650円

『元ルイ・ヴィトン トップ販売員の
接客フレーズ言いかえ事典』
つい、「何かお探しですか?」「サイズ違いもありますので」「大人気の商品です」など定型文を使い回していませんか? “無難なフレーズ→心が動くフレーズ" に変える方法を顧客作りのスペシャリストが豊富な事例と共に解説
大和出版 1,650円

“独立してよかったね”と言われるように― 獨協大学同窓会動画ニュース Vol.59
土井 美和さん(2001 年英語学科卒)


接客・販売員講師(株式会社Clienteling Advisory 代表取締役)
https://youtu.be/KjMEGRTiP18