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地域に寄り添い家業を守る父娘 千葉県野田市で創業270 年15 代続く老舗石材店

獨協人登場2023.04.12
地域に寄り添い家業を守る父娘 千葉県野田市で創業270 年15 代続く老舗石材店

父・良樹さんは獨協埼玉高校1 期生で経営学科卒業、長女・有里子さんも獨協埼玉中高から国際関係法学科卒業というお二人にお話をうかがった。


有限会社杉崎石材店
杉崎 良樹さん(88 年経営学科卒)
杉崎有里子さん(15 年国際関係法学科卒)


父・良樹さんのインタビューはご自宅へおじゃまして

獨協埼玉高校1 期生、高校大学の獨協生時代

 当時男子校の高校時代にはスキー愛好会を立ち上げ、高校生ながら、志賀高原で合宿もしました。1期生なので先輩はいませんでした。大学では学友会ポルカスキー愛好会で競技スキーに打ち込んでいました。当時は、学内に5 つ以上の競技スキーチームがあり「オール獨協スキー競技大会」などもあり、関東甲信越各地で開催されたいろいろな大会に出場しました。シーズン中は、愛車CIVIC で雪山に行ったらしばらく家に帰らないなど、5年間の大学生活を送りました。今も付き合いのある先輩との大酒をのんだ日々。最終学年では欧州へも少し長い卒業旅行にも行きました、そういう時代でした。


1987 年2 月オール獨協スキー競技大会での良樹さん
1987 年2 月オール獨協スキー競技大会での良樹さん
愛知県岡崎市(有)ナカセキでの修行中
愛知県岡崎市(有)ナカセキでの修行中

大学卒業後の石工修行

 1988 年、バブル時代の世の中を遠目に徳川家康生誕の地へ、日本の石材の三大産地の一つで“石都” と呼ばれている愛知県岡崎市で全国からレベルの高い職人を目指す人が石工修行に集まる地域で3年間の厳しい修行を経験しました。人の寿命の何倍も残る墓石、施主様に喜んでいただきつつも、子々孫々に影響してしまうという重圧がありますから跡取りは覚悟が要ります。

岡崎の創業者のもとで新しい石材店の経営を学ぶ

 中卒・高卒・大卒のいろいろな世代の混在する厳しい世界、経験値を積んで引き出しを増やし現場の業務を組み立てられるようになり、年季明けまでには、実家を継ぐ覚悟もできてくるものです。修行は若いうちに実家を離れ、生活習慣を見直す大切な機会。獨協大学時代の愛好会でスキーや上下関係などの経験もここで役に立ちました。今でも、全国への墓所の移設などでは修行時代の人脈があることで、施主様に提案することもあります。
 修行先の社長は初代で、実家とも違った拡大志向という背景がとても役立つ経験となりました。老舗の跡継ぎだからこそ、創業者から多くのことを学べたと思います、新しいことを導入し取り組むことや変化をしつつ守らなければならないことを再認識。今も、難しい局面では「先祖なら、父なら、親方なら、どう考えるだろうか」と考えます。
代々の墓に杉崎石材店が長く数代前から関わり、 今回は良樹さんが設計し新墓所に建立されたもの
代々の墓に杉崎石材店が長く数代前から関わり、今回は良樹さんが設計し新墓所に建立されたもの

地域の活動として

 岡崎での修行の最後の頃に野田市消防団の分団長から装備の採寸の確認の電話があり、実家に戻ってきたときにはすでに辞令が下りていて、帰宅した次の日から訓練が始まりました。地域の活動に勤しんで、現在副団長、若い人に声をかけ継続していかないといけないと思っています。全国で消防団員募集中!です。令和になってからは、NPO 法人鳳で理事長として活動し、野田・柏を中心にボランティアで地域の高齢者の終活を支えています。
 270 年続く家業を受け継ぎ守るということ、地域に寄り添い、時代の流れとともに墓石にかかわることのみでなく広く終活などをささえていかなくてはなりません。家業については、DX 等を取り入れ時代に合わせて経営を軽量化しつつ、維持し守っていきます。近年では蔵に保管してあった古文書なども野田市史料として役に立てていただくよう提供しました。
代々家業を継いでいる方の多くは感じることがあると思いますが、先祖に守られているということを思い、感謝しています。


続いて有里子さんにも伺いました。

長女・有里子さんはリモートインタビューで

父に連れられて行った蛙鳴祭で「ここに行こう!」と中学受験し獨協埼玉中学高校へ※蛙鳴祭は獨協埼玉文化祭

 幼い頃は引っ込み思案だったのですが、小学校5 年生のとき学祭へ行き、「私ここへ行く!」と中学受験を決意。獨協での10 年間で人と関わることの楽しさ嬉しさを知ることができたと思っています。父(良樹さん)の高校時代の恩師も現役で、父はPTA 活動にも参加して、獨協との関わりはとても深くなりました。大学は法学部国際関係法学科へ進学、父と同じくスキーのサークルへ加入、時代の流れで競技スキーではなかったものの、エカール基礎スキー愛好会で充実した学生生活を送りました。

エカール基礎スキー愛好会の合宿で(後列左から3 人目)

長女として家業を継ぐことを決意

 幼いころから、祖父(良樹さんの父)といろいろなところへ出かけ、話をする機会があり、祖父母が苦労し皆の努力があって今があることは認識していました。父母からは、継ぐように言われた記憶はありませんが、大学時代に自身が恵まれた環境で育ったことに再認識し、「自分の代で家業がなくなってしまうことは考えられない、自分が継いでお店をよくしよう!」と決意しました。金融機関に就職することで、地域のことやお金に関すること、地元のお客様のニーズを学ぶことが必要を思い地方銀行に就職。4 年半の行員生活では、地域の皆様とのコミュニケーションを通じて、お客様のために、資産形成・運用について提案できるようになり、貴重な経験をさせていただきました。石材店のお客様と通じることも多く気づきました。2019 年10 月に退職後、2020 年1 月より関西の石材店へ3 年間の修行へ。

東大阪の石材店で経営を学ぶ

 東大阪市(大阪府と奈良県の間)で、創業社長の経営のもと営業を担当。お客様のこと現場のこと、また歴史的建造物の修復なども受注している会社ということもあり、石に関するいろいろなことを学びました。休日にも京都・奈良・大阪へ神社や寺院を見学に行くことができたりと、野田の実家では経験できない本当に多くのことを学びました。
特に大阪の商習慣としての「勉強してや!(値引き)」には、当初は本当に驚いて理解するまで戸惑ったりもしました、今ではいい思い出です。
 


東大阪市の大阪石材工業(株)での修行中

今後やりたいこと

商売のやり方を引き継ぎつつ、女性の視点でしかわからないことを掘り起こし、伝統を守りつつ、SNS なども活用して、新しいことに挑戦していきたいと思っています。
https://sugiishi.com/
https://sugiishi.com/greetings


(取材:中島智子/ 写真・ 動画:飯塚勝久)



地域に寄り添い家業を守る父娘 千葉県野田市で創業270 年15 代続く老舗石材店ー獨協大学同窓会動画ニュース Vol.61
https://www.youtube.com/watch?v=Xge7jP9fNQA&t=99s